美容医療の使命(ロングインタビュー)

鎌倉達郎先生 聖心美容クリニック統括院長

「聖心に行けば、質の高い美容医療が何でも受けられる」。そんな医療を目指す聖心美容クリニック。
統括院長 鎌倉達郎先生に、ご自身の美容医療に対する思いと、現在の美容医療の現場について、そして患者さんへのアドバイスを伺いました。

先生が美容外科医となったきっかけを教えてください。

  • 鎌倉
  • 宮崎医科大学医学部を卒業し、外科を専攻。外科医として九州大学生体防御医学研究所附属病院(現・九州大学病院別府病院)に入局しました。学生時代からバスケットボールが好きで、根っからの体育会系(笑)。外科は体力勝負ですから、これが活かせる分野をと思い外科を選んだのです。病院では疾患グループに所属し、乳がんをメインに治療に携わりました。乳がんというのは他のがんとは異なり、医者のみならず患者さんや他の方からも、術後の傷や仕上がりを目で見てわかるもの。ここで、外科医というのは職人芸であり、技術が問われる分野である。腕の善し悪しが評価される、厳しい世界にあえて身を投じてみたい、そんな思いがだんだんと強くなったのです。その最たるものが美容外科でした。そこで、外科医として6年の経験を積み、美容外科医となりました。

自ら厳しい道を選ばれたのですね。

  • 鎌倉
  • 美容外科にいらっしゃる患者さんは、基本的には疾患を抱えているわけではなく、見た目は正常です。そこに手を加えてもっと良くしなければならない。妥協が許されないわけですから、これは非常に過酷です。コンマ数ミリの世界ですから、想像以上に大変なのです。しかし、患者さんに向き合い、期待に応えるために自分にプレッシャーをかける、そして仕上がりを患者さんに喜んでもらう。大変ですが非常に大きなやりがいがあると感じています。

腕だけではなく、患者さんと向き合い願望を聞き出す力も必要ですね。

  • 鎌倉
  • 美容外科医はコミュニケーション能力がとても大切です。まずはどこをどうしたいのか希望を把握します。そして、我々はプロとしてジャッジし、患者さんの希望を聞きながら、患者さんにとってよい効果を出すための治療法を提案します。医療ですので、メリットもあれば、痛みやダウンタイムといったデメリットを伴うこともあります。患者さんにも正しい知識を持っていただかなくてはなりません。ここの機微が非常に大切で、そして難しいところですね。

以前と比べて、患者さんの美容医療への意識にはどのような変化がありますか。

  • 鎌倉
  • 私が美容外科医となった20年前は、情報源といえば紙媒体がメイン。ところが、2000年以降インターネットが普及し、情報の質としては玉石混淆ですが、情報の量は圧倒的に多くなりました。患者さんの知識が増え、それに比例するように要求も増えています。以前は“先生にお任せします”という患者さんも多かったのですが、こうした方が少なくなってきていますね。また、2007年ぐらいに「プチ整形」という言葉が流行り、身体にも経済的にも負担が少ないプランを選ぶ方が増えました。現在、最も患者さんが多いのは40歳代、次いで30歳代、その次に50、60歳代で、若返り、アンチエイジングが圧倒的なニーズです。また、ニーズの増加に伴い美容医療を目指すドクターも増えています。

先の第104回日本美容外科学会(JSAS)では会長を務められていますが、現在の美容外科医をどうご覧になっていますか。

  • 鎌倉
  • やはり質をどう上げるかということが問われていると思います。現在、各大学医学部において美容外科を十分に指導、教育するシステムはありませんから、美容外科医を志すならば自分で学ぶしかない。しかし、学会やセミナーも増えています。海外からの技術、情報は常にキャッチしなければなりませんから、JSASのような学会は医者にとって貴重な場です。こうした学びの機会がもっと増えることを願っています。また、自分の知識や技術の向上に貪欲で、積極的に学ぶドクターがもっともっと増えてほしいと思っています。

良いドクターに出会うコツを教えてください。

  • 鎌倉
  • クリニックやドクターについての主な情報源は、現在はほぼ公式ウェブサイトしかありませんよね。ただ、これだけで判断するのは難しい。マスコミを含めた第三者的な評価も必要です。また、美容医療のドクターも一人の医者であり、一人の人間。会ってみないとわからないことも多いはずです。コツとしては、①クリニックに足を運ぶ、②医者の人間性を判断し、自分との相性をチェックする、③説明だけではなく、自分の話を聞いてくれるか、双方向のコミュニケーションをとってくれるかを確認する、④治療のメリットだけでなくデメリットも説明してくれる、これらを確認してみてください。

美容医療を選ぶ患者さんへのメッセージをお願いいたします。

  • 鎌倉
  • 何のためにこの治療を受けるのか、目標についてもう一度自分に問いかけてみてください。もっとキレイになりたい、もっとハッピーになりたい、そんな患者さんの希望をサポートするのが我々ドクターの使命です。治療の目標が明確であれば、それが叶った時の喜びは大きいはずです。また、アカデミックな分野として、きちんとした裏付けがある美容医療への要望というのも広がってほしいですね。例えば、当院の「プレミアムPRP皮膚再生療法についての医学論文」が、形成外科学誌「Plastic and Reconstructive Surgery(PRS)」のベストペーパーアワード2016を受賞しました。PRSは世界でも最高の権威と評される医学誌。ここに掲載されるというだけでも難しいのですが、賞を受賞するというのは大変に光栄なことです。今後も医学的な根拠のあるより質の高い医療を提供していきたいと、気持ちも新たになりました。美容医療を受ける方の大半は女性ですが、女性のパワーには日本を変えるほどの大きなものがあると考えています。ぜひそのお手伝いをさせてほしいですね。

インタビュアー 岡本茉衣(ライター)